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2008年5月12日 (月)

法医学の権威にお話をうかがう

今週は頻発する硫化水素自殺についての取材で全国の専門家に尋ねまくりました。
化学に弱い僕はなにやら特殊な物質のように思ってましたが、温泉地などで嗅ぐあの独特な匂い、あれこそ硫化水素そのものだそうです。
お話を伺った中でも浜松医科大学の鈴木修教授は面白い方だった。
先生のご専門は法医中毒学。法医学とういう学問はいかなるものなのか、なんとなくは理解していたものの、やはり実際に研究しておられる現場を訪れると目から鱗の連続でした。
教授はまず内外の文献をパラパラと見せて下さった。
満載のカラー写真にうつしだされたもの。それはグロテスクとしか表現しようのないモノと化した遺体の数々でした。
先生は静岡県を中心にこれまで二千件以上の検案と解剖を行ったとおっしゃいます。日々、殺されたり自殺したりした人の死体を凝視し続けるという仕事。その事実に圧倒されます。
硫化水素で自殺した遺体の特徴、硫化水素という物質の特性、早期に発見された場合の対処法などを伺う。一通りインタビューし終えた後、尋ねてみました。
「遺体の写真を眺めていると、いろいろな物語が頭の中に噴出するんですが、先生は解剖に当たって感情移入することはありませんか?」
「それはないですね。でも遺体を解剖する前に警察の方からレクチャーがあるんですよ。この人はどういう変遷を経て自殺をしてしまったのかとか、この人はどういう理由で殺されるに至ったのかね。そういう話を聞いていると、ごくたまにですけど、僕でも自殺するかも、僕でも殺しちゃうかも、と思うことはありますよ」
「こういうお仕事をなさっていて、面白いと感じることってどんなことですか?」
「意外な発見がある時ですね」
「例えば?」
「殺された男の傷は深さが十センチくらいで縦長のものだったんですよ。ところがね。後で分かったんだけど、凶器は日本刀だったんだよね。先っちょで少し刺しただけだったんだ。殺すつもりはなかったんだろうね」
「なるほど。日常的に遺体を見続けていて何か哲学的な感慨にふけることかおありなんでしょうかね? 死と何かとか?」
「その反対です。遺体には哲学やイデオロギーもありません。人を殺す、自分を殺す。そこにあるのは本音だけ、何の建前もない本音の世界なんです」
先生のお言葉が強烈な印象を残したものです。

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