2008年6月10日 (火)

「夢をかなえるゾウ」

120万部を超える売上を記録し、ドラマ化も決まった「夢をかなえるゾウ」の著者、水野敬也氏にインタビューしてきました。

しがないサラリーマンの家に突然やってきたゾウの神様ガネーシャ。関西弁をしゃべり、神様でありながら自らの欲望には弱いといういかがわしい神様です。
主人公はガネーシャの言葉に疑いを持ちつつも、彼の助言を実行してみます。そのうちに少しずつ人生が変わりはじめて・・・
自己啓発の本でありながら、まったく押し付けがましいところがなく、物語形式でどんな世代の人でも自らに近づけて読めるような体裁となっています。

驚いたのことに、当初の企画では誰でもできる日常的な習慣を三百個集めただけの本だったという。ゲラの段階までいっていながら編集者、著者ともに物足りなさを感じ、一から練り直したのです。結局完成までに三年の月日を掛けているとのこと。一朝一夕でできた本ではありません。

版元にうかがったところ、出版直後の読者カードにおける購買理由は、「知人にすすめられて」というものがほとんどだったという。当初は口コミで読者層が広がったのです。
また最初に火がついたのは関西方面の書店だったということにも驚きました。確かにガネーシャは関西弁をしゃべるものの、水野氏は愛知県出身です。
大阪人の僕が読んでもまったく違和感がないので、担当編集者に「関西弁が完璧なんですけど・・・」と問うと、
「僕は京都に長く住んだことがあり、嫁さんは大阪育ちで、校閲担当は神戸出身。その後、関西弁ネイティブ五人に目を通してもらいました」との返答。最後まで気を抜かず細心の注意を払って完成された本であることが分かります。

とにかく腰が低く、サービス精神が旺盛な水野氏。なるべくしてなったミリオンセラーといった印象を持ちました。

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2008年5月 4日 (日)

平田大一氏、新著発刊!

Photo_3 ついにアスペクト社より発刊されました。
平田大一さんの著作「キムタカ!」
去年の二月よりプロジェクトを開始してから一年と三ヵ月もかかってしまいました。
平田さんは沖縄を拠点に子どもの演劇活動を行っています。
彼が手がける舞台によって、地域が活性化し子どもたちが変化していく様はまさに奇跡といっていいでしょう。
演出家であり、社会起業家であり、教育者であり、詩人であり 旅館経営者でもあるという多面的な側面を持つ平田さんの真の姿をあますところなく伝えきれているのか。
企画・編集を担当したものとしては気がかりであります。

本のタイトルである「キムタカ」とは肝高と書き、志高く生きよとの意味。自分の生まれた土地に対する誇りを胸に世界へと羽ばたく生き方を平田さんが熱く語ります。社会教育や地域振興に興味を持つ方はぜひ手にとってみて下さい!

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2008年4月26日 (土)

「ラブホテル進化論」を読みましょう!

Photo 文春新書より「ラブホテル進化論」という本を上梓された金益見(きむ・いっきょん)さんを囲んでの飲み会に参加しました。
彼女は博士課程在学中の大学院生。もちろんこの本もエロい内容ではありません。ラブホテルの歴史を学問の対象とすることにより、戦後日本の「愛」のあり方が浮かび上がってきます。面白い本なのでぜひ手にとって下さい。

宴はつつじ咲く大阪城公園で行われました。
韓国の巻きずしである金さん手製の「キムパ」に舌鼓を打ちながら、お話を伺います。関西のラブホテル経営者は石川県出身者で元豆腐屋、風呂屋を営んでいた人が多いこと、部屋に設置されている自動精算機が実は法律に抵触しかねないこと、「一週間」「ウォーカー」などの情報誌の企画が業界を変えたことなどなど、目から鱗の話ばかり。パワフルでいてチャーミングな人柄にも魅了されました。

帰宅してから益見さんがやっている「まきずし大作戦」というHPを拝見しました。在日コリアン三世として、同じ国に住む違う国籍の人との共生を目指すべく制作されたもの。様々な職業の在日コリアンの生き様が軽快なマンガで紹介されています。

http://makikome.com/

このHPのタイトルである「まきずし大作戦」。「たくさんの米粒と様々な具が入っている巻き寿司のように、たくさんの人を巻き込んで、色んな味が合わさって、いい味が出るような企画になれば・・・」という意図から命名したと記されていました。大阪城公園で何気なくお相伴にあずかった「キムパ」に込められた益見さんの想いを知り胸が熱くなった次第です。

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2007年9月26日 (水)

国境の一匹狼!

新刊の取材で東京出張に行ってきました。仮タイトルは「国境の一匹狼」。破天荒に生きた在日韓国人H氏を主人公にしたノンフィクションの企画です。H氏は太平洋戦争中に尼崎で生まれ苦学の末、東京水産大学に進学。日本で学んだ技術を韓国に伝え、沿岸漁業しかなかった母国の水産業を飛躍的に発展させた人物です。

彼の活躍した時代は朴正煕大統領の時代とまったく重なります。人権を抑圧しながらも重工業の振興に注力し世界有数の産業国家となる礎を築いた朴政権。その漁業政策については残念ながら全く知られていません。

過ぎ去った歴史の中にある近代国家建設の熱意と一人の在日の苦闘を描き出すことが出来ればと思っています。版元は朝日新聞社。制作にあたって武者震いすら感じる今日このごろです。

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2007年8月14日 (火)

屋宮先生、新著発刊!

41ydyjxnsfl__aa240_ 「南の島のたった一人の会計士」屋宮久光先生が二冊目の本を上梓されました。タイトルは「儲けのバイブル 成功する社長はなぜトイレのカギを気にするのか?」阪急コミュニケーションズ。

会計や税務が苦手でも実践的なノウハウが会得できるよう工夫されています。たったの25項目しかありません。それでいて百人のうち百人が実践して百人が継続できるよう「かゆいところ」に手の届く内容になっているのです。

問いかけは単純なもののようにも受け取れますが、実は多くの経営戦略、会計理論、マーケティング戦術等に裏付けされたエッセンスであることに気付かれることでしょう。
「あなたはトイレのカギ、閉めましたか?」
この問いかけに「あれっ」と思われた方は是非ご一読あれ!

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2007年5月20日 (日)

こっそり遊べるマル秘術

17日付けの日刊ゲンダイ(大阪版)に記事を書きました。タイトルは「こーすれば、風俗が10倍楽しめる」マル秘術。かなり大きなページを割いていただき感激です。

フー嬢と本気で付き合うにはどうすべきか? 指名する場合にババをつかまされないノウハウ。女の子のキャリアの見分け方など、お得情報を伝授しました。夕刊紙ということで、モロ男目線の記事ですが笑ってもらえれば幸いです!

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2007年3月23日 (金)

泣きたい時は「リトルDJ」

Little_dj 鬼塚忠氏待望の新著「リトルDJ」がポプラ社より発刊。私も少し編集のお手伝いをさせてもらいました。

海を臨む病院に入院した弱虫な少年。院内放送でのDJを担当するうち、医師や看護師、入院患者らの人気者になっていきます。ある日、小児病棟で包帯でぐるぐる巻きにされた少女たまきと出会い、彼は恋に落ちます。様々な出会いと別れを経て、病状が悪化した少年は十一歳の誕生日、ある決意のもと病院を飛び出し……。

とにかく泣ける物語。感動系のお好きな方は是非是非買ってみて下さい!

ちなみに本作は2007年冬公開予定で映画化されます。監督に永田琴、出演は神木隆之介、福田麻由子、佐藤重幸、西田尚美、石黒賢、原田芳雄など。全国に感涙の渦を巻き起こすと思われます!

公式HP http://www.little-dj.com/

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2007年2月 7日 (水)

ガルシア=マルケスに葬られた女

Photo_8 新潮社から出ている『ガルシア・マルケス全小説』が売れているとのこと。ご存じの方も多いと思いますが、ノーベル文学賞作家であり、80年代のラテンアメリカ文学ブームの旗手として日本の読書界にも旋風を巻き起こした小説家です。日本の知的水準もまだまだ捨てたものではありません。
先日、書店で「ガルシア=マルケスに葬られた女」という本を発見し、思わず衝動買いをしてしまいました。著者は毎日新聞の記者で長らくメキシコ支局長をしておられた藤原章生という方です。
マルケスの小説に「予告された殺人の記録」という作品があります。タイトル通り、その男が殺されることを、その村の人々の多くは事件の前から知っていた。にもかかわらず、その男は予定通り殺されてしまったというお話です。結末が見えているにもかかわらず、圧倒的な筆力で読者を鷲づかみにします。まったくのリアリズムの手法で、少し描写の狂った幻想性のある空間を描ききるのです。そしてこの小説は実際に起こった事件を元にして作られたものなのです。
藤原氏のこのルポは、なんとこの殺人が行われた現地へ行って、マルケスの弟や妹、結婚式の晩に実家へ突き返され殺人事件のキッカケを作ったアンヘラ・ビカリオのモデルとなったマルガリータの姪や友人に片っ端からインタビューしているのです。誰が彼女の最初の男だったかという事を調べに……。
そう書くと下世話な話のように思えるのですが、神話的な印象のある小説と同様、この本も端正で叙情的な文章によって綴られています。
面白かったのは皆それぞれの語りに尾ひれが付いているので、何が本当だか余計に分からなくなる点です。藪の中とでも言うのでしょうか。神話が神話を呼ぶといった感じです。どうやらカリブ海沿岸の人達は事実も想像もごちゃまぜに語る生来の資質のようなものを持っているようです。マルケスの小説世界を地でいくような地域であるという事が良く分かりました。
筆者は幼なじみのプライバシーを暴露したうえ一切の謝罪を拒む文豪に対し批判的な感情を顕わにします。このあたりは作家の性というものを浮き彫りにします。
悲劇のヒロインであるマルガリータの写真も掲載されていました。美しい人でした。何より実物のマルガリータも極めて神秘的な女性であったという事も有り難かったです。原作に興味を持たれた方は読んでみて下さい。

アップルシード・エージェンシーの鬼塚さん、栂井さんと共に明日から沖縄取材へ行ってきます。沖縄は久しぶりでモノレールを初めて見ることになります!

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2007年1月30日 (火)

週刊ポスト「著者に訊け」

Photo_7 週刊ポスト2月9日号に屋宮久光先生の「南の島のたったひとりの会計士」が三ページにわたって紹介されました。掲載されたのはブック・レビュー「著者に訊け」のコーナー。

本の内容にそって構成された紹介文も上手く書けています。先生の生き様から、「奄美群島振興開発特別措置法」の問題、そして地域活性化への展望までキッチリと本の真意を紹介してくれています。お読みでない方は今すぐ本屋さんへ!!

記事の中で拙著についても囲みコラムを書いて下さいました。何と地方経済活性化の記事に風俗店の経営記が紛れ込んでいるではありませんか。場違いな気もしてかえって申し訳ないような気がします。屋宮先生、本当に有り難うございます!

屋宮公認会計士・税理士事務所HP
http://www.amami-cpa.com/

南の島のたったひとりの会計士 扶桑社
http://www.amazon.co.jp/dp/4594052533?tag=amamicpa-22&camp=243&creative=1615&linkCode=as1&creativeASIN=4594052533&adid=0S41RAKQTZ3EE29BTJMJ&

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2006年12月15日 (金)

ニッポン犯罪狂時代

Hanzaikyou私も編集のお手伝いをさせてもらった北芝健氏の著作、「ニッポン犯罪狂時代」が発刊となります。

少年法や死刑廃止論争といった耳目を集める社会的問題からネット犯罪、公安警察、北朝鮮といった堅いテーマから風俗に至るまで、おなじみの北芝氏が厳しく迫ります。全編にわたる、ニッポン警察に対する熱い擁護に対しては異論を持たれる方もあるかとは思いますが、治安維持という立場からみた日本論として参考になるのではないでしょうか。

いろいろな週刊誌やネット上で毀誉褒貶甚だしい北芝氏ですが、実際にはテレビで見る以上に腰が低くサービス精神旺盛な方です。

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2006年11月23日 (木)

食品添加物の実態!

Photo_6 遅まきながら、大ベストセラー安部司著「食品の裏側」東洋経済新報社を読んだ。実に恐ろしい本である。

自分自身、添加物には気を遣ってきたつもりだった。本だし類は一切使用せず、削り節、煮干し、昆布で丁寧に出汁をとる。みりん風調味料や合成酒も買わず、ニンニク、生姜は一切チューブのものは使用しない。胡椒は粒のものを都度都度挽くし、味噌だって化学調味料の入っていないモノを選ぶ。決して贅沢ではなく、安い材料で美味しく調理するための最低限の投資だと思っていた。

そんな私でも知らないことがいっぱいあった。例えば明太子。生ものなのにどうしてあんなに日持ちするのだろう、と漠然とは思っていたが、十種類以上の様々な食品添加物が投入されているという。水とサラダ油と添加物だけで出来ているコーヒーフレッシュや殺菌剤のプールに浮かぶサラダパック。百キロの豚肉からハムが百三十キロ出来上がる仕組みなどなど、まさに恐怖体験ばかり。読了後、すぐさま丸大豆醤油を買いに走ってしまった。

かといって、この本はいたずらに消費者の不安感を煽っている訳ではない。著者自身、添加物入りの食物を全く口にしないわけではないという。現代人にとって無添加の食品だけをチョイスして生きていくなんて金銭的にも時間的にも不可能だ。食の安全を他者に委ね、多種多様な味覚を楽しんでいる以上、食品添加物を完全に排除することは出来ない。要は自分が何を摂取しているのか、知ることがまず大切なのだと言う。

以前、分子生物学者・福岡伸一青山学院大学教授のエッセイでコンビニのサンドイッチに関するものを読んだことがある。どうして腐らないのかちょっと考えてみようという趣旨のものだった。われわれは自分の身を自分で守らなくてはならない時代に生きている。

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2006年11月 8日 (水)

メルマガ「平成・進化論」

 「まぐまぐ読者日本一」19万部の配信を誇るメルマガ「平成・進化論」1150号にて、「お客さん、こーゆーとこ初めて?」が、今日のお勧め本として紹介されました。

 主宰する若きカリスマ経営コンサルタント、鮒谷周二さんとは8年前、私の経営していた風俗店での邂逅がありました。と言っても鮒谷さんの名誉のために申し添えておきますと、お客さんとして来られたのではありません。当時サラリーマンだった彼が、副業でやっていた仕事の営業で、大阪梅田・東通り商店街にあったファッションサロンへ何度も足を運んでいたのでした!先日のパーティでお会いした際、当時の話が出てお互い仰天したものです。

 それにしても一般人が風俗店へ飛び込みで営業に来ることなど殆どありません。鮒谷さんの類い希なるバイタリティを、こんなところからも伺い知る事が出来ます。今日の成功もひとえに前へ向かう行動力のたまものだと思います。

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2006年11月 6日 (月)

南の島のたったひとりの会計士

459405253301_ss500_sclzzzzzzz_v37880564_私も編集を手伝わせていただだいた、屋宮久光先生の著書「南の島のたったひとりの会計士」が扶桑社より発刊されました。屋宮先生は公認会計士の資格を持つ偉い方であるにもかかわらず、ダイナミックでいて気さくなお人柄の持ち主。お会いして、すぐさまファンになってしまいました。

先生は大手の会計事務所に勤め社会的にも経済的にも満ち足りた状況でありましたが、奄美群島振興開発特別措置法で疲弊した郷土を救うべく、故郷である奄美大島へ戻ります。故郷であるシマには上場企業や負債総額が二百億円以上といった会計監査の必要な企業や団体はほとんどありません。大半は税理士としての仕事しかない地域なのです。都会で学んだ最先端のノウハウを還元して地元振興に尽くそうと考えていたのでした。
 そこで待っていたのは一筋縄ではいかない地方経済の現実です。シマ特有の時間感覚は都会のビジネスで鍛えられた先生にはコスト感覚の欠如と映ります。友人まで巻き込まれた選挙違反により、公共事業に頼り切りの現実を突き付けられもしました。何度となく現場で衝突し、孤独感にさいなまれた揚げ句、公認会計士でありながらアル中になってしまいます。

 ようやく苦境から脱出した先生は経理面だけにとどまらず、経営上のコンサルティングでシマの中小事業所の再生に尽力します。まさに「ドクター・コトー」の会計士版ノンフィクションです。

 巻末には「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」の著者・山田真哉さんの熱烈な解説文も付されています。地域からみた日本という視点からの示唆に富んだ提言もなされているので、東京一極集中の是正といったテーマ興味のある方は、是非手にとってもらいたいです。様々な会計上の知識を実際の出来事を通じて分かりやすく解説してくれているので、経理初心者には入門書としてもお勧めします。

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2006年11月 1日 (水)

赤ちゃん勝手に取り上げ記④

4_1 生まれてみれば黒字三十三万円

慶応大学四年のA君(24)が、自宅のアパートで赤ちゃんを取り上げたのは、一月五日の午前四時のことだった。

「入院もせず無事出産して、これでようやく落ち着ける」とA君は安心したが、騒ぎはこれで収まらなかった。

その日の午後七時、二人は妻のN子さん(18)の実家に電話を掛けて、

「今朝の四時に赤ちゃんが生まれちゃった!」と報告した。もちろん、不可抗力だったことにした。すると母親は大慌てで、

「そりゃあ大変だ。すぐ病院に連れていきなさい!」A君らは仕方なく、近くの産婦人科医院に電話して、タクシーで病院へ向かうと、診察に出てきた医師は、

「えっ、本当だったの?」と目を丸くした。聞けば、

「自宅で赤ちゃんを産んだので、いまから連れていく」という類の電話はちょくちょくかかってくるのだが、そのほとんどがイタズラ電話。それが本当に連れきたのでびっくりしたのだが、医師は赤ちゃんを見て二度びっくりした。ヘソの緒がタコ糸で蝶結びにしてあったからだ。

「どうして、生まれそうだと気づかなかったのかね?」と医師に聞かれたA君は、

「いやあ、陣痛が軽くて短かったし、あっという間にうんじゃったんです」と、とっさにウソをついたのだった。

A君が”確信犯”だったことは、親兄弟はもちろんのこと、近所の人も知らない。ちょうど出産時期が正月でアパートに人がいなかったなが幸いした。

くだんの医師は、入院を頑なに拒否する二人を見て、貧しい同棲時代とでも思ったのか、ヘソの緒を入れる箱をプレゼントしてくれ、

「がんばって、生きていくんだよ!」と、同情したのだった。

ところがAたち、実はN子さんの両親から出産準備金として二十万円を仕送りしてもらったうえ、国民健康保険から助産費として十三万円支給され、都合三十三万円の黒字になったのである。

二人はそのカネで乳母車とビデオデッキを買い、箱根に一泊二日の旅行に出かけ、きれいに使ってしまったそうである。

赤ちゃんは女の子。現在、生後七ヶ月で、体重も九キロに増え、元気にスクスクと育っている。

(週刊朝日、88.8.19より転載)

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2006年10月31日 (火)

赤ちゃん勝手に取り上げ記③

3 へその緒は包丁、胎盤はゴミ袋へ

赤ちゃんを自分たちで取り上げることにした、慶応大学四年のA君(24)と妻N子さんに、とうとうその日がやってきた。

一月四日の午後八時。弱い陣痛とともに破水が始まった。すると、それまで、

「私はどんなことがあっても、絶対に病院には行かないわ」と頑固に拒否していたN子さんも急に弱気になり、

「どうしよう、どうしよう」とオロオロし始めた。

「ここでしっかりしなくては男がすたる」A君は自らを鼓舞し、出産準備にとりかかった。まず、寝室のベッドの上に黒いビニールのゴミ袋を敷きつめて、急造の分娩用ベッドをセット。風呂桶に逆性石けんを溶かし、妊婦用にお茶を準備した。(分娩中妊婦は猛烈にノドが渇く、と実用書にあった)。

午後十一時、十分間隔で陣痛が激しくなった。A君は必死で実用書の文句を思い出した。

「分娩の初期は力を抜き、子宮口が指三本開いたら、いきんでもよい」

ところが、いつ、いきませたらいいのか分からない。A君は焦った。そのときだ。いきなり、

「ドバッ」と血が噴き出したのだ。周りはまるで血の海。N子さんは、

「助けてー、死んじゃうー」と絶叫し、A君はすっかり自信をなくしてしまった。

「もういきんでもいいの?」と聞かれても、涙を流して、

「ねえ、病院に行こうか」というのが精いっぱい。

「こんなことじゃいかん」A君は平静を取り戻そうと、分厚い医学書を猛スピードで繰った。N子さんは、A君に見切りをつけたのか、背を向けて勝手にいきみ出してしまった。

午前三時、赤ん坊の頭が見えてきた。A君はハッと我に返り、「いきんで、いきを抜いて……」と呼吸法の指導を始めた。

そして午前四時。A君はついにわが子を取り上げ、赤ん坊は産声を挙げ始めた。

「こんな夜中に急に赤ん坊の声が聞こえたら、近所の人は変に思うだろうなあ」とA君がぼんやりしていると、N子さんに、

「ヘソの緒をきらなきゃ!」とせっつかれた。A君は、焼き豚用のタコ糸でヘソの緒を縛ると、台所のコンロで焼いた包丁で切断した。胎盤は黒いビニールのゴミ袋に入れて、生ゴミと一緒に捨ててしまった。

(週刊朝日、88.8.12より転載)

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2006年10月29日 (日)

赤ちゃん勝手に取り上げ記②

2_1 出産用具はお近くのスーパーで

「赤ちゃんを自分たちで取り上げよう!」と決心はしたものの、夫で慶応大学四年のA君(24)にとっても、妻のN子さん(18)にとっても、もちろん初めての経験だったし、予備知識などあるハズもなかった。

おまけに医者や両親が許してくれそうにない。A君はとりあえず周りを欺くため、都内の某大学病院に、入院のための「出産申込書」を提出した(もちろん入院する気はなかったが)。それに、定期検診だけはきちんと受け、A君は、超音波診断装置に映るわが子が、N子さんのお腹でうごめく様子を見るたびに、、

「よしよし、お父さんがお前を無事に取り上げるからね」と語りかけたのだった。

八ヵ月目に入り、A君はまず、出産に関する知識を仕入れるため、慶応大学医学部の生協で「分娩」「育児と出産」というタイトルの分厚い辞書のような医学書を二冊買い込んだ。その厚みがなんとなく頼りになりそうだったからだが、いざひもとくと、専門用語ばかりでチンプンカンプン。結局、お茶の水の書店で買った、千円ほどの実用書二冊で勉強することにした。しかし、これとて自宅出産の方法なんか書かれていなかった。参考になったのは、「緊急にお産が起こった場合」というたった一ページで、自身がついたのは、

「ヘソの緒の切り方」だけだった。A君の頭を不安がよぎった。

「失敗したら、おれの名前が新聞に載るなぁ」。そして予定日の一ヵ月前、

「そろそろ来るかもしれない」と思ったA君は、N子さんを連れて近所の薬局に、実用書に紹介されていた出産用の医療品を買いに行った。

消毒用アルコール、逆性石鹸(分娩作業中の手洗い用)、T字帯(産後の止血用)は揃った。しかし、ヘソの緒を切るとき、緒をしばる糸はどこにもない。実用書にも、どこで売っているのか書いてなかった。

薬局の帰り道、スーパーへ立ち寄ったA君は、ふと、焼き豚用のタコ糸に目をつけた。

「あっ、これこれ。ヘソの緒はこれで縛ればいいや」

こうして揃った出産用具一式は、洋服ダンスの飢えにポンと置かれた。A君とN子さんはなんの不安もなく、一ヵ月後のその日を待つばかりだった。

(週刊朝日、88.8.5より転載)

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2006年10月28日 (土)

赤ちゃん勝手に取り上げ記①

1 学生時代、十七歳の女子高校生を孕ませたうえ駆け落ち、その挙げ句、自宅にて二人きりで強行出産に及んだ経験があります。その顛末を当時の週刊朝日「現代出来学」のコーナーに連載してもらいました。古い記事ですが、載っけてみます。

妊娠駆け落ち気付いたら七ヶ月

慶応大学四年のA君(24)歳が、当時都内の某私立高校一年のN子さん(18)歳と知り合ったのは一昨年の秋のこと。それから二人はなんとなく付き合い始めた。

高知出身のN子さんは親元を離れての女子寮住まい。A君は管理人の目を盗んでは、毎日のように彼女の部屋に入り浸っていた。ところが、付き合い始めて半年、昨年五月の終わりごろになって、N子さんが突然、「吐き気がする」と言い出したのである。A君は焦った。薬局で妊娠判定器を買ってきて調べてみたが、分からずじまい。仕方なく、A君はN子さんを連れて新大久保にある、見るからに「堕ろし専門」といった感じの産婦人科医院の扉を開いた。診察が終わると先生は、暗ーい顔で、

「確実に妊娠しています。早いうちにもういちど来てください」

A君はこの瞬間、「あーあ、大学辞めるんだな」と観念したそうだ。「親が許してくれるハズがない。逃げよう!」。二人は八王子のアパートに遁走した。

いっさい跡を残さないようにしたにもかかわらず、引っ越ししてわずか十日後、二人の親に突き止められてしまった。聞けば、なんと電気料金からアシがついたらしい。話し合った結果、A君が大学へ戻ることで、結婚と出産を承諾してもらうこととなった。

九月十六日、文京区の某協会で式を挙げ、二人は早稲田に新居を構えたが、妊娠のことはすっかり忘れていた。すでに七ヶ月目に入り、腹もだいぶ目立ってきたにもかかわらず、「どうしようか……」と、二人で顔を見合わすばかり。某大学病院に通い始め、出産のパンフレットをもらってきたものの、出産の際、妊婦は導尿、浣腸、半剃毛、会陰切開が施される……などと書いてあるのを見て、N子さんは、

「どうして、尿道に管を突っ込まれ、うんこを見られたり毛を剃られたりした揚げ句、切り刻まれなきゃならないの」

と言い出す始末。A君が説得しても、「入院したくない」の一点張りなのだ。A君も仕方なく、電話帳で新宿区内の助産婦さんに片っ端から電話してみたが、すべて廃業。医師から「おそらく安産でしょう」と太鼓判を押されていたこともあってか、A君は、

「自分でやるしかないか」と心を決めたのだった。

(週刊朝日、88.7.29より転載)

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2006年10月25日 (水)

原稿を送ってみましたら③

Photo  出版が決まったという連絡を受けてから、1ヵ月後の7月11日に再び上京。鬼塚、清水両氏に伴われ、初めて講談社を訪問しました。東京の出版社に行くということだけで既に舞いあがっており、柄にもなく何度もヘアーの乱れを整えたりします。やっぱり出版界も芸能界みたいに昼でも「おはよー」とか言うのだろうか、なんて妄想が脳裏に浮かびました。

 カフェテリアのような所で、打ちあわせが始まりました。まず、すっげー恰好良い仕事出来そうなキャリアウーマンから名刺を頂戴しました。これが、奈良原編集長です。全身から業界の人オーラが出てて圧倒されてしまいました。
「こちら、担当の高橋君ね」
といって若者ファッションに身を包んだテレビ局のディレクターっぽい人を紹介されます。後から聞いたところによると、彼が、私の原稿をとても気に入ってくれて、講談社の出版企画会議にかけてくれたということでした。でも、この時は、そんなことも知らず、生まれて初めての《担当編集者》さんにドキドキしていました。 なんて美しい響きだろう。今すぐ誰かに電話をかけて「オレの担当の編集者がさぁ」なんて、調子にのって自慢したくなってきました。

 さて、この日のメインイベントはタイトル決定でした。出版が決まってから、大阪にいる僕のかわりに、アップルシードの清水さんと高橋さんとで作業を進めてくれていたのですが、タイトルだけが、なかなか決まっていなかったのです。僕が、最初につけていた『おしなべてエキセントリックな人たち~なにわ花街経営日誌』というタイトルは、わかりにくいという理由で当然のようにダメ出しされていました。

 原稿は風俗店の経営記ですが、エッチなシーンはまったくありません。なんとかエログロい路線だけは避けたいもの。僕は、代替案を出させてほしいとお願いしていたので、このとき、以下のようなタイトルを出しました。

「はめつ大好き全員集合」「ドツボな面々」「夜にドンマイ」「秘密なお仕事」「よい子立ち入り禁止」「ノーノーガールとイケイケボーイ」「報告とほほランド」「夜の大人の幼稚園」「場末に花を咲かせましょう」「へなへな頂上決戦」「もっぱら破滅キャラ」「勝手に自分探し」「お客さん、こーゆーとこ初めて?」「実録、出たとこ勝負」「客は帰せど銭返すな」「濃いめの人々」「色街つれづれ始末記」などなど。

 意見は割れたものの、その場で、高橋さんがイチオシ、鬼塚さんも推薦した『お客さん、こーゆーとこ初めて?』に決まりました。正直なところ、一番エッチっぽいタイトルに決まって、少々驚いたものです。こうして、初めての打ちあわせは終了したのでした。

 本の装丁は、初対面ながら信頼できる人と感じたので、《担当編集者》の高橋さんに一任しました。インパクトがあって笑えて上品なもの、と無茶な注文をしていたのですが、その後、出来上がってきた装丁案を見てビックリ。
 本物のカエルが、ミニチュアの風俗店の中で、行為に及ぼうとしている写真を表紙に使用してあったのです。真剣なんだけど、どこかトホホ感があって、可笑しくて哀しい感じがよく出ています。大阪人の僕でさえ、かなり笑える素晴らしい出来映えでした。

 『お客さん、こーゆーとこ初めて?』は、風俗店に集まる整形フリーク、自傷マニア、金欠ヤクザ、タレコミ魔、悪徳刑事、人妻風俗嬢といった、一本切れた奇矯な人間達の繰り広げる喜悲劇を描くノンフィクションです。風俗界に生きる連中はみな過剰さを背負った濃い面々ばかり。一生懸命になればなるほど空回りし、異様なほど活力に溢れるその生き様を活写してみました。このブログを読んで、興味を持たれた方は、是非是非買って下さいね(笑)

(アップルシードAGC発行まぐまぐメルマガ「出版プロジェクト・物語小説編」vol40より転載)

 

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2006年10月22日 (日)

Friday増刊号に記事を書きました

Dyanamite 遅くなりましたが、Friday Dynamite十月二十四日増刊号P36~P38に記事を書きました。「フーゾクの常識 ナゾと疑問 Q&A」というタイトルで、元経営者の立場から、一般の人には伺い知れない風俗店の謎に迫ります。

項目は「風俗嬢の職業病は?」「写真と実物が違いすぎやしませんか?」「風俗で一番かかりやすい性病はいったい何?」「ごねると怖いお兄さんが出てくることは?」「風俗界にエリートってあるの?」などなどです。

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2006年10月18日 (水)

原稿を送ってみましたら②

Photo_1 アップルシード・エージェンシーに原稿を送ってから3週間後、パソコンのメールソフトの受信トレイに『評価とアドバイス』なるメールを発見しました。

「遂に来たんや。」

 クリックする際、緊張で息が詰まりそうになりました。画面にあらわれた本文は思っていた以上に、長大でした。

 内容は総論と各論に分かれ、題材や文章、構成についての詳細な分析。読みすすめるうちに頬が紅潮し、心臓の高鳴りさえ聞こえてきました。

「…本作は、世にあふれる実話系雑誌の記事とは明らかに一線を画し、 読む者を惹きつけて止みません。風俗嬢やヤクザとの軽妙な関係等、 赤澤様の直接経験故の力強さを感じさせます。また、それに裏付け られた文章も見逃せません。いわゆる性風俗を扱う作品の多くは、 著者の取材力の低さを誤魔化すためか、そこで働く人々を過度に脚色する傾向にありますが、本作は違います。実に飄々と、時にコミカルに描かれています。読む者に無駄な涙を強いることがなく、それでいて深い余韻を与えるのです。加えて、構成の妙も注目すべき点でしょう。経験に基づくノンフィクションにまま見られる事実の羅列ではなく、いくつかの伏線がきちんと張られ、それが無理なく後の物語を引き出しています。ノンフィクションとしても風俗小説としても読める逸品に仕上がっています…(後略)」

 好意的なコメントが記されてあったのはもちろん嬉しかったのですが、何より自分が書いたものを人様が真剣に読んでくれたうえ、論評してくれたということに感動しました。生まれて初めて読者というものに出会った新鮮な驚きでした。

 末尾には、出版へむけ、営業をかけてみる旨の記載がありました。予想外の知らせに、またまた驚天動地。こうなったらすべての希望をアップルシード・エージェンシーに託すしかない、といった思いを抱きました。

 ちょうどその頃、私がトラック運転手として勤めている運送会社で、外食産業向け食材の配送へと配置転換されました。その現場は、かつてないほど過酷で、かつ長時間労働を強いられました。規制緩和と燃料費高騰で運送業界の現場はとんでもない状況になっているのです。

 帰宅してもパソコンにスイッチを入れることすらままならない日々でした。実は、その頃、出版社への営業を始められていたアップルシード・エージェンシーから、原稿をデータで送付すること、原稿にプロローグを書き加えることを依頼するメールが届いていたのですが、届いてから1週間後に気付くという体たらく。指示にまったく応えられないまま、2ヵ月が過ぎてしまいました。

 せっかくお声をかけていただききながら、このままでは愛想を尽かされてしまう―。危機感を抱いた私は、取りあえずアップルシード・エージェンシーの皆さんにお会いしたうえ、今しばらくの時間的猶予をいただこうと上京したのでした。4月5日のことです。

 大学時代は東京で暮らしていたとはいえ、アップルシード・エージェンシーのある六本木エリアへ足を踏み入れるのすら15年ぶりの今浦島。ヒルズを目の前に「で、でかい。なんちゅうでかさや」と独り言をつぶやくなどお上りさん丸出しでした。

 生き馬の目を抜く出版業界、その中で嵐を巻き起こすカリスマ・エージェント。なにせすごく格好いいカタカタ職業です。お会いする前に思い描いていた鬼塚さんはズバリ「切れ者」といったものでした。スタッフの皆さんもすごい早口で、聖徳太子みたいに何本もの電話に出ながら口角泡飛ばしている姿を想像しておりました。

 緊張の面持ちで事務所へお邪魔したのですが、予想に反し、オフィスは「なごみ」を感じさせるアットホームな雰囲気に包まれていました。
 鬼塚氏の実物はというと、とつとつと言葉を選ぶようお話になる方で、これぞまさに薩摩隼人といった風格がありました。いかにも業界風の人が苦手だったので、非常に好感を持ったものです。スタッフの清水さん、栂井さんも穏やかで実直な方でした。

 お3方はそれぞれ原稿に関する丁寧なコメントを述べて下さいました。自分の書いたものを真剣に読んでくれる人が目の前にいるということ自体信じがたく、夢のような至福の時間でありました。また、3人とも頭に思い描いている本のイメージが微妙に違うという点も新たな発見でした。

 その時、清水さんから、出版の是非を検討してもらうための追加原稿として、プロローグを書き足すように、と再度言われました。僕はゴールデンウィーク明けまで身動きがとれないので、5月半ばまで待って欲しいとお願いし、幸い了承してもらえたのでした。

 ようやく追加原稿が出来上がったのは6月6日、最初の講評をいただいてから4ヵ月が過ぎようとしておりました。
 翌週の15日、僕の携帯にアップルシード・エージェンシーから着信がありました。鬼塚さんからでした。

「出版社が決まりました」

 僕は、とりあえず「ありがとうございます」と万感を込めて答えたのですが、さらに、鬼塚さんは、

「驚かないで下さいね。こんなことは滅多とないのですよ。講談社さんからの出版が決まったのです」

 と仰せになるではありませんか。しばらくは言葉の意味が理解できませんでした。電話を切った後、僕はサイドネットを揺らしたシェフチェンコのようにガッツポーズをしながら雄叫びを上げ走り出していたのでした。

(アップルシードAGC発行まぐまぐメルマガ「出版プロジェクト・物語小説編」vol39より転載)

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2006年10月 5日 (木)

原稿を送ってみましたら①

初めまして。
赤澤と申します。

 アップルシード・エージェンシーという出版エージェントへ原稿を送ったことにより、一介のトラック運転手から、あれよあれよと言う間に、講談社からの単行本デビューと相成りました。ヒョウタンから駒というか、まるでタナボタというか、当事者でありながら、いまだに、自分の身の上に起こったことが信じられぬ思いであります。皆様のご参考に値するかどうかはなはだ心許ない限りですが、出版に至るまでのいきさつを綴らせていただきます。

 私は、昭和39年生まれで大阪府出身です。慶大在学中に、たった一度の過ちから女子高生を孕ませてしまい、駆け落ちをし、ほどなく親に見つかり大学復学を条件に結婚の承諾をもらいました。その後、自宅にて二人だけの出産を強行した経験もあります。

 卒業後、業界紙記者、塾講師、信用金庫営業マンといった、わりとお堅い仕事をしていたのですが、ひょんなキッカケから大阪・梅田の風俗店に勤める羽目に。ほんのしばらくのつもりがトントン拍子に出世し経営にまで携わることとなりました。その間、酒と女に溺れ苦楽を共にした女房にまで逃げられてます。ここまで書きつらね、われながら恥の多い人生であると実感いたします。

 『お客さん、こーゆーとこ初めて?』は、風俗店経営に携わった際に出会った、整形フリーク、自傷マニア、金欠ヤクザ、タレコミ魔、悪徳刑事、人妻風俗嬢といった一本切れた奇矯な人達のノンフィクションです。一般人の生活とは縁遠い風俗の世界を、警察の手入れ、ヤクザとのせめぎ合い、ストーカー駆除など活劇風の出来事で描いてみました。

 実は、執筆のキッカケは、娘が突然大学へ進学したいと言い出したからなのです。勉強とは無縁の脳天気な高校生活を送っていたので、当然、卒業後は働くものと高をくくっていたものですから、寝耳に水。
「大学なんか行ったって、しゃあないぞ、ワシかてただの運転手や」
 それとなく翻意を促しましたが、決意は固いようでした。水商売時代で稼いだあぶく銭は、文字通りうたかたと消え、まさにデフォルト寸前で、素寒貧状態の身の上。なんとか学費だけでもひねり出さねば。前から好きだった書くことで、なんとかなればと、背水の陣というか火事場の馬鹿力で、『山本一力的悲壮感』を持って書き上げました。

 いざ作品らしきものが出来上がったものの、途方に暮れてしまいました。なにしろこの十年ほど、お水業界や肉体労働界に身を置いていたものですから、周囲に活字を読む類の人間が皆無なのです。とにかく誰かに読んでもらいたい。そんな中、インターネットにてアップルシード・エージェンシーという会社の存在を知り、「原稿を読んでもらいたいので、審査料の振込先を教えて下さい」とメールを送りました。

 アップルシード・エージェンシーからの返答には、「出版不況の折、文芸での商業出版はハードルが高く、ものにならない可能性の方が大きい上、講評に関しても厳しい文言が並ぶであろうことが予想されるが、そのような結果に終わろうとも是認できるか」とありました。

 僕は、この問いかけにアップルシード・エージェンシーの商業主義一辺倒ではない真摯なものを感じました。早速、「むしろダメならダメではっきりとクソミソに言って頂きたく存じます。どのように否定的な評価を出されましてもありがたく拝受し、今後の糧にしていく所存であります」と、書き添えたうえ、原稿を送りました。

 投函した後はそれだけで満足してしまい、しばらくは書いたことすら忘却して、肉体労働に勤しんでおりました。ところがこの後、私の人生を大きく変える激震が待っていたのです。

(アップルシードAGC発行まぐまぐメルマガ「出版プロジェクト・物語小説編」vol35より転載)

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